ポリシーブリーフ

Overview
  • 長期避難問題の解決に向けて:恒久的解決に関する福島からの教訓

    FGC ポリシーブリーフ #1

    モシニャガ アンナ (UNU-IAS リサーチアソシエイト)

    国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)が刊行したUNU-IAS ポリシーブリーフシリーズの第1号にて、2011年3月の東日本大震災と福島第一原発事故後に長期化する避難の解決に向けての政策提言が福島での現地調査 などに基づいて発表されました。調査を企画・実施したモシニャガ アンナ(UNU-IAS リサーチアソシエイト)が執筆した長期避難問題の解決に向けて:恒久的解決に関する福島からの教訓 と題された本ポリシーブリーフは、原発事故後の福島の例をもとに長期化する避難状況が、現存の政策や法的・制度的枠組みに対して投げかける課題を取り上げ、透明性のある政策策定、情報提供そして避難者との対話の重要性などを強調しています。

    要旨

    避難問題に対して恒久的解決策を見いだすのは容易なことではない。深刻な原子力災害の場合、長期にわたって地域が居住するのに安全でなくなるため、 その間に変化する避難者のニーズや能力、脆弱性、優先順位に合わせて、暫定的または代替的な解決策が必要である。既存の国際文書にて極めて重要な指針が提 示されているが、その妥当性を広めるには、長期避難状況への理解を深めることが欠かせない。

    提言:

    • 政策、法律、制度を継続的に見直すことで、恒久的解決策を見いだせる環境を体系的に確立する必要がある。既存の枠組みの断片的な調整ではなく、包括的な改革が必要になる場合も多い。
    • 社会的影響と精神的影響への対応も、物理的インフラの(再)建設や環境復旧と同様に重要である。
    • 避難者が当事者意識を持って復興プロセスに主体的に取り組めるようにすることが不可欠である。

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    災害後の生活再建:福島の原発避難者を事例に

    FGC ポリシーブリーフ #2

    モシニャガ アンナ (UNU-IAS リサーチアソシエイト)

    ポリシーブリーフ第二号災害後の生活再建:福島の原発避難者を事例  には、 原発事故で被災した自治体の関係者や、福島県内外で暮らす避難者、各地で活動する避難者支援団体などへの聞き取り調査をもとに、原発事故が生み出したさま ざまな状況にある避難者が、生活を立て直して社会に統合される過程で直面している課題を分析しています。さらに、初期対応から復興への過渡期において、原発避難者が生計を立て直して新しい生活の環境を整えるために必要なこととして、避難者やその受け入れコミュニティを取り巻く状況を徹底的に分析し、その分 析に基づいた政策を策定することと、その政策を柔軟に応用することを提言しています。

    要旨

    災害によって避難を余儀なくされた人々の生活再建は、生計手段を立て直しながら新しい環境に適応するという二重の困難を伴う。福島の原発避難者は、 生活状況が次第に多様化する初期対応から復興への過渡期において、こうした困難に直面している。避難者が今後の生活をどこで立て直すことにしようとも、そ れを可能にする的確な政策が求められる。

    提言:

    • 過渡期における政策の見直しは、避難者を取り巻く状況の変化、避難者の生計戦略、そして既存の補償または支援策なしで自立する避難者の能力を徹底的に分析したうえで行うべきである。
    • 避難者のニーズに合わせた生活支援策を提供し、孤立しがちな人々の統合を促すため、受け入れコミュニティを支援する必要がある。
    • 受け入れコミュニティと避難者の間の理解を促すための方策は、双方の利害が共通する問題に焦点を当てるべきである。

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    原子力災害とリスクコミュニケーション:福島からの教訓

    FGC ポリシーブリーフ #3

    佐藤 映子 (UNU-IAS リサーチアソシエイト)

    福島第一原発事故で被災した住民、自治体関係者、市民社会団体などへの聞き取り調査や、2015年11月に開催された国連大学研究ワークショップ「福島原発事故後におけるリスク理解とコミュニケーションのあり方」から得られた所見をもとに、佐藤映子(UNU-IAS リサーチアソシエイト)によるポリシーブリーフ第3号が発表されました。本ポリシーブリーフ「原子力災害とリスクコミュニケーション:福島からの教訓」は、福島原発事故後に直面しているリスクコミュニケーションの主要な課題について議論しています。そして、原子力災害が環境・医療的問題のみならず、社会的問題という側面を併せ持つことに着目しながら、日本および原子力産業を営む国々の政策策定者、原子力産業事業者やその他のリスクコミュニケーション実務者に向けて、原子力災害に関連したリスクコミュニケーションについて提言をしています。

    要旨

    福島第一原子力発電所事故の後、様々なリスクコミュニケーションの取り組みが実施されている。その一方で、被災者間の情報格差、放射線リスクの多様な認識、専門的かつ不確性を伴う放射線科学、根強い不信感、復興の複雑さといった困難が存在する。これらは、原子力災害に関連したリスクコミュニケーションが、継続性、適時性とともに関係者参加型で状況に配慮した対話であることの重要性を示している。
    提言:

    • 放射線リスクコミュニケーションは平常時より継続して行い、原子力産業に関するリスクについて関係者間で話し合い、共同でリスクのモニタリング・評価を行うべきである。
    • 状況変化に応じたリスクに関する情報を適時に市民に提供するため、緊急情報コミュニケーションシステムを整備し、有事の際には、一貫した情報コミュニケーションに努める必要がある。
    • 現存の科学知識の限界と専門家間の見解が異なる点について、市民のリスク認識や懸念を考慮しながら、関係者間で明確に議論すべきである。
    • 被災後の放射線リスクコミュニケーションは、災害からの復興において直面する他の課題を配慮した包括的な対話として実施するべきである。また、それは政策策定や実施プロセスの中心に位置づけられるべきである。

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